千代紙の小鳥
「その後ね、”双子”っていう存在が好まれていない事。きっとそれが原因でお母さんは倒れてしまった事。優しかったけど、とても辛辣な事を、苦しそうに話してらした。」

「あいつらは?」

数メートル先で駄菓子屋のおばちゃんに新聞を渡した彼らの頭を、おばちゃんの手が優しく撫でている。




「泣いてたわ。」

「でもね。」

「ん?」

「泣き喚いてるあの子たちに、お父さん言ったの。」

『お前たちは、この街の人にも、愛されてるんだよ。パパやママだけじゃない。街の人皆に。』

『お前たちは五月七日に生まれただろう?その日はなこの街で眠るお姫様の誕生日と一緒なんだ。』

『だからな。お姫様と同じ日に生まれてきたお前たちが、悪いことを呼んでしまう様な事はない。お姫様と同じ日に誕生したんだから、幸運なんだって。幸せを運んできてくれるんだって。』


まだ遠くの方に見えるあの子たちは、また違う人に新聞を配っている。

「あの子たちが、『『でも……ママが…』』って言ったら。」

「『ちょっと休んでるだけだよ。すぐに目も覚めるってお医者さんも言ってる。』って。」

「『お前たちはね、お姫様に守られているんだよ。』」

悲しいだろう。辛いだろう。愛する我が子を守っているのが、自分たちではないなんて。

それでも、父親は。哀傷の色を安穏のそれに変えて、愛くるしくてたまらない我が子の涙を彼らの顔ほどある大きな手で拭って、もう一度二人を抱き締めた。
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