あかねいろ Thousand Leaves! 完全版
優斗が、サドルを引き戻した。


もうヤダ!


文句を言ってやろうと優斗を見た。



「茜は俺のこと勘違いしてるよ。

勝ち組なんかじゃない」



静かな声だった。



「世界に出たら、もっと凄い人たちが山ほど居るんだよ。


そんな人でも死ぬ。

それが海なんだよ。

海外に出たら、波は三階建てのビルくらいの高さで…


水深は40センチもないし、

海底はサンゴが突き出てる。


少しでもバランス崩したら…

海面に叩きつけられて、

上から何トンも海水が降ってくる。


日本は波が低いから、台風の日が絶好の練習日和で。


俺だって死にかけたし、俺の師匠は死んだ。

師匠の息子は、未だに見つかってない。

自業自得だって言われても、それがサーフィンなんだよ。

天才だって関係ないよ。

毎年何人も死んでる。

山登りと一緒だよ」
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