強引な彼との社内恋愛事情




タクシーを降りた。
目の前には彼のマンション。


だけど、ここまで来て気づいてしまった。鍵がかかっているからエントランスまでしか入れないことに。

かといって、インターホンで呼び出して鍵を開けて貰うわけにも行かない。
黙って置いていくつもりだったし。

入るか入らないか、マンションの前を行ったり来たりしていると、髪の長い女性と目が合った。
少し不審そうな顔を私に向けている。
確かに怪しいけど。


だけど、「ああ」と微笑みかけてきた。


「あの。一幸と同じ会社の方ですよね?」


「は……はい?」


どこかで見たことある気がするけど。しばらく考えて思い出した。
この前、一階のフロアで広重と話をしていた事務員の女性だと。
手にはスーパーの袋を抱えていて、豆腐とか肉のパックが見えた。
< 77 / 102 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop