ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
その反応に、響さんが一瞬眉間に皺を刻んだ。


「……なんだよ、一体」

「だ、だって、恥ずかしいっ……」


見下ろされたまま身体を竦ませる私に、響さんは一度小さな溜め息を漏らした。


「……萌の『触れて』ってどこまで? もしかして、キスまでだった?」

「ち、違っ……」


呆れた声に反論して顔を上げた。
不審そうな響さんの瞳を一身に浴びる。


「……私ばっかり、恥ずかしい、です……」


真っ赤な顔で消え入りそうになりながらなんとかそれだけ言うと、ああ、と響さんが声を漏らした。


「俺も脱げ、ってことか」


あっさりとそう言うと、響さんは身体を起こした。


私の身体を跨いだ状態で膝立ちして。
裾から捲り上げるように両腕を交差させて潔くシャツを脱ぎ捨てる。


そんな仕草に。引き締まった裸の上半身に、身体中の血管が大きく脈打つ。
まるで、全身が心臓になったみたいだった。


「……あ……」

「これでいい? ……っつーか、またガン見してるし」


私の不躾な視線に苦笑しながら、響さんはゆっくり私に体重を預けて来る。


「あっ……」


素肌同士が密着する感触に、心臓がフル回転を始める。


「……心臓の音、凄い。緊張してる?」


クスッと笑いながらそう言われて、鼓動がリズムを狂わせた。
気持ちはいっぱいいっぱいで、私はただ大きく首を縦に振った。
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