ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
一瞬何を言われたのかわからなくて、私は目を見開いて、は?と聞き返すしか出来なかった。
私の隣では、それまでマイペースに食事を進めていた響さんが、ゴホゴホと堰き込んでいた。


『ちょっ……、親父っ!?』

『こんな男だが、私にとっては大事な一人息子だ。萌ちゃんみたいな可愛らしいお嬢さんが嫁に来てくれたら、私も親として安心出来るんだが……』


嫁っ……!?


おじ様のストレートな言葉で意味を理解して、さすがに私も慌てた。


おじ様が私を本当の娘のように思ってくれているのはわかる。
でも、響さんをダシにする形で本当の『娘』になる訳にいかない。


イケメンで仕事も出来て、公私共に華やかな噂の絶えない人。
いくらなんでも、結婚なんて。
一生の約束なのに、私が響さんのお嫁さんなんて、あまりに不釣り合い過ぎる。


だから、慌ててそう言って、食事もそこそこに逃げ帰ったはずだった。


なのに……。


それから四回目の夕食の後、私は響さんにプロポーズされた。


『俺が君の家族になってやる。一生守ってやるから、結婚しよう』


恋人の時間もなかった。
親しくする時間だってなかった。


お互いのことは何も知らない。
もちろん結婚なんて、響さんの口から出た言葉でも信じられなかった。
響さんが何を考えてそんなことを言い出したのか、私には全くわからなかった。


でも、嬉しかった。
私だけに向けてくれた真っ直ぐな言葉が嬉しかったから。


私は、『YES』の返事をした。


だって私は、仕事でインタビューした時から、響さんに憧れていたから。


だから、七不思議の真相はわからないままでいい。
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