知ることから始まるんだ!
連れ去られた明日奈
今日の夕飯の当番ははるかで、サポートとして明日奈が手伝っていた。

いつもの夕飯とかわりなく・・・その場は和やかだったが、幸樹だけが言葉少なく、緊張している面持ちで食事をしていた。


「先生、今日は元気がないんだな。
はるかの作ったメニューで嫌いなものでもあったのかい?」


輝彦にそうきかれて、幸樹はハッと自分がいつもよりなお一層無愛想状態なことに気がついた。


「いや、違うんだ。ちょっと考え事をしていただけで、はるかの料理が気に入らないなんてことはない。」


「そっか。それならいいけど・・・なんかいつもよりガチガチになってる気がしてさぁ。」


その様子をずっと眺めていた祥万は、醤油をとりにいくついでに幸樹の横に座ると、幸樹に小さな声でつぶやいた。


「明日奈に告白したんだろ。
結果はふられたように見せかけておいて、じつはOKだったんだろう?」


「なっ・・・祥万、おまえ。
なんでそんなことわかるんだ?」


「ふふっ、先生は普通じゃないんだから、
先生が物悲しいくらいの悲壮感が漂ってるときは、じつはハッピーなことがある・・・違いますか?」


「くそっ、そのとおりだ。
今夜、明日奈が俺の寝室にきてくれることになってる。
はっ・・・じゃまするんじゃないぞ!」


「はいはい。俺とライはその頃はとっても忙しいから大丈夫だよ。
そっか、先生も隅におけないねぇ。
じゃ、俺はもう1杯おかわりをしてこようっと。」


「祥万には隠し事できないなぁ。」

焦ったためか赤い顔をしてしまった幸樹に、明日奈は首をかしげていたが明日奈もまた、周りには気づかれないようにと心がけていたのか、給仕を終えるとさっさと夕飯を食べていた。


いつもとかわりなく夕飯時が過ぎ、明日奈は台所を片付けてからお風呂を済ませて、夜着を選んでいた。

「やっぱりセクシーな方がいいのかしら?
でも、なれないのは余計に緊張しちゃうなぁ。
先生って今日は特別!っていうよりもナチュラルな方が好きだし・・・。」




明日奈が着るものを迷っている時間、幸樹も妙に緊張して落ち着かないでいた。

「しまったな。何時って決めておけばよかったかも。
いつ来るのかわからないっていうのは、緊張だけで疲れてしまいそうだ。
いや、あせりすぎて、乗り込むのもまだ早いだろうし・・・明日奈だって生まれて初めてのことで悩んでいるかもしれないし・・・。
こういうのを初々しいっていうのかな?
しかし・・・あまりに時間をかけられてはこっちの身がもたないよな・・・。」


幸樹はベッドで1時間待ち、2時間待ち・・・もう11時をとっくにまわってしまっているし、もしかして明日奈は疲れて自室で眠ってしまったのかも。
それなら、もう我慢ならない!
0時を前にして、幸樹は明日奈の部屋へと突入することにした。


「くそっ!今になって怖気づいたんじゃあるまいな!
なんか典型的な悪役になってるんじゃないのか・・・俺は?

おい、明日奈・・・もう寝てしまったのか?
入るぞ。」


明日奈の部屋に幸樹が入ってみると、下着と夜着がばらばらと飛び散ったように床に落ちていた。

幸樹は嫌な予感に背筋に寒気がはしった。

そして、とうとう幸樹は明日奈がここから連れ去られたんだという証拠を目にしてしまう。


「な・・な・・・奈々が転がったままじゃないか!」
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