アイザワさんとアイザワさん

「ほんと、樹はバカで不器用だね。」

瞬が呆れたように言った。

俺だってそう思うよ。お前のように器用に生きられたらどんなに楽か。


「で……やっちゃったの?」


……やっぱり、お前にはなりたくない。


黙りこんだのを『肯定』と捉えた瞬は俺にこう言った。


「だったらさ、何でそんな苦しそうな顔してるんだよ?好きだったんだろ?ずっと。何やってんだよ、いつまでも。」


「もっと楽な『恋』しろよ。正直、見てられないんだよ。……叔父さんだって、親父だって口には出さないけど心配してんだよ。」


心配?……心配してるんじゃなくて、俺がだらしないから見張ってたってだけだろ。


楽な恋?何言ってんだよ。
恋なんて、ちっとも楽じゃないし、楽しくもない。俺にとっては、いつも辛くて苦しいだけのものなんだよ。



そう思って逃げたいのに、俺は結局諦められないんだ。



俺は……相沢 初花のことが好きなんだ。

< 117 / 344 >

この作品をシェア

pagetop