アイザワさんとアイザワさん

病院に着いた。


ほんとは直前まで病院に行くのを躊躇っていた。……家族じゃない私が、こんな大変な時に行ったら迷惑じゃないかと思ったから。


そんな私の心も目の前のこの人には分かってしまっているようで、


「源次さんは『家族』なんだろ?だったらいちいち考えなくてもいいんだよ。心配だったから来た。それでいいだろ。」


ほら行くぞ、とポンと私の肩を叩いてくれた。

その優しい手と言葉に押されるように、私は源ちゃんの元へ向かった。



「あっ、初花ちゃん。さっきは電話ありがとね。……おじいちゃん、まだ眠ってるの。」


恵梨ちゃんが迎えてくれた。
先ほどはありがとうございました、と相澤にお礼を言ってから恵梨ちゃんは源ちゃんの状態を話してくれた。


「検査してもらったけど、頭は問題ないって。最近血圧高かったから、それが原因みたい。」


急に倒れたので脳の病気を真っ先に疑っていた私は、その言葉にほっと胸を撫で下ろした。


検査も含めてしばらく入院することになったと恵梨ちゃんから聞いて、源ちゃんも眠っていることだし、また来るね、と声をかけて帰ることにした。


「ほら『大丈夫』だった。分かったから安心しただろ。」


相澤がそう声をかけてくれた。
なんとなく、私が安心出来るようにとここまで連れてきてくれたのかな、と思った。

< 148 / 344 >

この作品をシェア

pagetop