アイザワさんとアイザワさん

こうして女子力が落ちた、と思った時は『Felicita』に行って『心の恋人』のイケメンオーナーを見ると気分も女子力も上がるような気がするけど、前に鞠枝さんと食事をして以来店が忙し過ぎて行くことができないでいた。


私はすっかり憂鬱な気分になっていた。



その気分に拍車をかけるように、留守電の『録音』ボタンがチカチカと点滅しているのが目に入ってしまった。


……聞きたくないなぁ。


相手も内容も、大体予想がついていた。



ふぅ、と一旦呼吸を整えて『録音』ボタンを押す。電話の主は、予想通り母親だった。


「もしもし、初花?源さんから忙しくしてるって聞いたけど、連休中にはこっち帰って来られないの?……電話ちょうだいね。」



相変わらず、感情の感じられない声だな……と思う。


無意識に息を止めて聞いていたらしい。
留守電が終わった途端、息苦しくなってはあ、はあ、と深呼吸を繰り返した。

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