アイザワさんとアイザワさん

とりあえず、謝るに限る。
「す……すみません」

ぱっ、と時計を見る。シフトに入る時間が迫っていた。『やらかし』た上に、遅刻なんてできない。

「しっ、失礼します!」


私は、慌ててロッカーへと向かった。


最近、やっと新体制が整ってきた。便宜上は週休2日でも、毎日店に顔を出さなければいけなかった今までと違って、6月に入ってからは週1日くらいは休むことができていた。


私は、その相澤の7日間のうちのたった1日のお休みの日によりによって発注のミスを『やらかし』たのだ。


さらに、不運なことにその日は鞠枝さんもお休みだった。


やってしまった……


そう思ってももう遅く、夕方に入荷したマーマレードジャム12個をぼんやりと見つめる。
スーパーならともかく、12個はコンビニでは過剰在庫だ。

イチゴやブルーベリーなら何とか売れる。
ジャムは賞味期限が長い。だけど……マーマレード……は売れないよなぁ。


……買い取りだな。と覚悟を決める。

しばらく朝ごはんはパンで、マーマレード祭りだ。私は半分の6個だけ売り場に並べると、そのまま残りの6個を箱から出さずにスタッフルームのほうへと寄せた。

さ、働くか。

ミスは反省してるけど、落ち込んでいる気持ちはさっさと忘れるに限る。また新しいミスを呼ぶからね。前向きに、前向きに。

私は落ち込む気持ちを振り払うように、しばらく仕事に没頭した。
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