アイザワさんとアイザワさん

「帰ったら息子とやってみようかしら……」

茜さんには今4歳になる息子さんがいる。

「そうですね。網とか吹き流しくらいならできるんじゃないですか?見本になるように線を引いて。ペンじゃなくてクレヨンとかクーピーとかで引くと、切った後も跡が目立たないし、模様みたいになって綺麗ですよ。」


「初花ちゃん、慣れてるのねぇ。幼稚園の先生みたい。」

「まぁ、そんな感じで……いろんなとこで作り方教えてましたから。あと、作り方はほとんどおばあちゃんから小さい頃教えてもらったんですよ。」


そう答えながら、私はてきぱきと折り鶴を折った。


「あれ?鶴って七夕で飾るっけ?」


「去年も折りましたよ……。」
やっぱり忘れてる。


「家族の健康を願う、って意味があるんですよ。今年は鞠枝さんが無事に赤ちゃんを出産できるように、ってのがいちばん大きな願いですかねぇ。」


鞠枝さんの予定日は9月の末だ。もう制服を着ていてもお腹が目立つようになってきて、お店のほうもだいぶ落ち着いてきたこともあって、
6月いっぱいで手伝いを終えていた。


入籍も最初は式を予定していた10月に一緒にしようと思っていたらしいけど「母子手帳に父親の名前、書けないじゃない!!」という諸事情により、入籍だけは済ませたらしい。


七夕祭りの次の日は土曜日なので、鞠枝さんとシフトで関わりのある人たちだけでささやかに送別会をする予定になっていた。


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