恋の仕方がわからない

6




えー……そんなこんなで、駅前のカフェに四人で来ました。
じゃあなぜあたしと悠斗先輩だけで座っているのかと言いますと……。


由香はせっかくの初デート?だし、あたしも邪魔したくないしで、提案した。
もう先輩はあたしの症状を理解してくれるし、優しいから大丈夫だと思って。
それでも由香はその提案に渋い顔をしていた。あたしを心配してくれているのは嬉しいけど、あたしのせいで由香が幸せになれないのも辛い。

先輩は由香の性格も理解している。由香が何を気にして提案を受け入れないのかもわかったみたいで、あたしに近づかない、なんて約束もしていた。
谷口くんは不思議そうに見ていたけど、何も言ってこない所が先輩に似ているなぁ、なんて。




「奈子ちゃん、何にする?コーヒーでいい?」
向かいの席に座った悠斗先輩。
少し遠めのテーブルには由香と谷口くん。2人は会話が弾んていて幸せそう。
よかった……。
「ぁ、ごめんなさい!あたし、苦いの無理で…」
あたしが慌ててそう言うとふふっ、と先輩は微笑んだ。
「じゃあ、ココアとかならいいのかな?」
「あ、ココアで!」
「あったかいのと冷たいのはどっちがいい?」
「あったかいのがいいです!」
先輩は優しい。
男の店員さんがあたしの方に来ないように全部注文もしてくれた。
「じゃあ、すいません。アイスのコーヒーとホットのココアで。あと……ガトーショコラ」
「え」
あたしが止める間もなく店員さんは確認を始めた。
「アイスのコーヒー、ホットのココア、ガトーショコラで宜しいですね?少々お待ち下さい」
店員さんが立ち去ると先輩は慌てたあたしににっこり笑う。
「チョコ、好きだったよね」
文化祭の時、三十分程保健室にいさせてもらった。その時先輩とはいろんな話しをした。
いくら由香がいるとは言え、初めて会った人に発作を見せてしまって慌てていたあたしに落ち着ける様に沢山話しかけてくれたのが悠斗先輩だ。
高校生とは言え、その時の悠斗先輩は高校一年生であどけない表情で笑っていて。大人な空気をまとっている訳でもないのにあたしの居やすい様にしてくれて、しかもそれが自然に出来る。
あの高校を選んだのだって、先輩方が優しくって進学校だからなんて理由だけじゃない。
本音を言うと先輩にまた会いたかったからなんだと思う。誰にも言えないけど。「あれ、チョコ嫌いだったっけ?」
微妙な間にキョトンとする先輩。
「…っ…先輩、覚えてたんですか…」
どうにか絞り出した言葉。ずっと憧れていた人がこんなに近くにいる。








呼吸困難になりそうだ。


















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