課長と私

story2



ガタガタ……っ





夜の11時30分、玄関の方から物音がした。







「…先輩?大丈夫ですか?」





「んー…」





「お酒くさい……酔ってるんですか?」





「…酔ってな…い」






珍しく先輩が酔っている。お酒はめちゃくちゃ強いのに。

大学の時の友達と飲み会だと言っていた。


それにしても顔にはあまり出ないんだなぁ…







「お水、持ってきますね。」





「ん…」






履いていた靴をゆっくりゆっくり脱ぐ。

もう立てないのか、リビングまで這ってきた。






「先輩、ほらお水ですよ。…明日確実に二日酔いですね。」





「………。」





「先輩…?飲まないんですか?」





「楓ちゃんが…飲ませて…」





「え??」






じっとりとした目でこちらを見る。

正気なのかこの人は。







「ど、どうぞ…」






とりあえず口元にコップを持っていく。







「ちがう…」





「何が…ですか。」





「口移し……」






「何言ってんですか。飲んでください。」





「……嫌。」








子供か…


いつもは適度な甘え方をしてくる彼が、今夜は完全に小さい子のようになってしまった。

お酒は怖い…
まさかこんなこと店員さんにはやっていないだろうな…







「飲めるでしょ。」





「…口移し、して…」





「そ、そんな恥ずかしいこと……」





「喉…かわいた……」







うとうとしている彼。



どうしよう…このままほっとくのもアリだけど………
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