体から堕ちる恋――それは、愛か否か、
生理になったとき、お父さんには黙っていてと頼んだのに、その晩にはしゃべってしまった。

彼氏に振られて泣いていたこと、誰にも言わないでよと念を押したのに、数日後「元気出してね」と、友達から連絡がきた。

なんで、こんなに何でもぺらぺら話してしまうのだろう。母の口のチャックはもともと閉まらないようにできているらしい。

本当に内緒にしたい話は母に漏らしてはいけない――これは、これまで幾度も母を信じて失敗してきた綾香の教訓だ。

「わかってるわよ。特に話す人もいないし」
弾んだ声でそう言い、台所に立った母の姿を目で追いながら、「絶対に言うよね」と綾香は小さくつぶやいた。

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