体から堕ちる恋――それは、愛か否か、
第八章 予期せぬハザード
翌日、綾香の母・敦子から、優の母・里美に会社経由で電話が入った。

里美はちょうど日曜日の講座に顔を出していた。
藤沢という名前で、先日浮上した優の結婚話の相手だというのはすぐにひらめいた。
でも夫の勇が優に確認したところ、とりあえず結婚はないようだということだった。
もしかして優と彼女の認識に何か食い違いがあり、それに対する文句のひとつでも母親にしてみようということか。

このとき里美は、優の彼女本人からの電話だと予測していた。
しかし「娘と、息子さんの優さんのことで――」と敦子が切り出したので、ああ、結婚話を広めた母親の方か。
まさか実は本当に結婚することになって、あいさつの電話かしらと、その意図を推し量った。
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