囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~


そして多分、それを及川も感じていたんだと思う。
確証なんてないけれどそう思った。

だから及川は、信用されなくて当たり前みたいな事をあんな傷ついたみたいな顔して言ったんだって。

玲奈に言っておこうと思う、と言った私に、及川は驚いた顔を浮かべた後、少し黙って……それから嬉しそうに微笑んだ。
きっと、私が言わんとしている事が伝わったんだろう。

信じるっていうのが、口先だけじゃないって。

及川の柔らかく緩んだ顔を見て、うん……と思う。
やっぱり私が見たいのは、傷ついた部分を隠した微笑みじゃなくて、こういう、柔らかく穏やかな笑みだ。

「俺は誰に知られても構わないし、むしろみんなに知られたいんだけどね」

繋いだ手を、グイッと引かれ肩同士がぶつかる。
何かと顔を上げる前に、おでこにキスされていて……にこっと笑う及川の胸をドンと半分殴るみたいにして押した。

「そろそろ戻るよ。ちゃんとチェックアウトしないと」

そもそも、何時に出るのか聞くために及川を探してたのに……気付けば、探し始めてからもう一時間が経とうとしていて驚く。
本当にチェックアウトしないとマズイ。

広がる緑と空の青さを目に焼き付けるようにして眺めてから立ち上がる。
石階段を下りて行くと、隣を歩く及川が覗き込むようにして聞いた。


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