囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~


「20個は確かに妥当かもね」

そう答えると、及川は「だよな」と明るい笑顔で言った。

私はもう及川を好きじゃない。
及川がそう思うのは、私がこの三ヶ月必死にそう演じてきたからだ。

嘘を信じ込ませる事に成功した証拠で、それを狙ったんだから喜ばしい事でもある。
きっとこのまま嘘を重ねていけば、及川も完全に騙されてくれるかもしれない。

だけど。
『あの時の事、本当に覚えてねーの?』
『ちなみに深月は分かんの? そういう、やきもちみたいな気持ち』
『じゃあ深月は何個理由言えたら本気の恋だと思う?』

そんな問いに、何度も平気な顔して答えられるほど、強くはない。

閉じ込めた好きの気持ちは重く強くその存在を主張し続けてるっていうのに。
それを隠して笑う事がこんなに苦しいだなんて……知らなかった。

それでも、あの夜の事を後悔できない私は。
及川がこれから気まずく思うとか分かっていながらも、想いを伝えたくなってしまう私は。

きっと恋の病にどっぷりかかってしまっているんだろうと、笑顔の仮面の下で思った。

好きな人がくれるものなら苦しみさえも愛しいだなんて、誰かが言っていた気がするけれど。
そんなの、その恋が終わったからこそ言える事だと思うし、終わってないうちに言える人なんてかなりのマゾだ。

終わりの見えない自分の想いの中にいる今。
伝えられない想いに埋もれて、窒息してしまいそうに苦しかった。


『あの時の事、本当に覚えてねーの?』

指先の熱も、掠れた声も、優しいキスも。
これっぽっちも頭から離れなくて。ちっとも思い出になってくれなくて……困る。

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