囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~


もう話しかけないで、なんて言ったところで職場は同じだし、そうなってくれば仕事で話さなくちゃならない事は普通にある。

だからといって、今更〝話しかけないでって言ったけど、あれ、プライベートでって事であって仕事上は仕方ないから〟なんて言うのはおかしいし間抜けだ。

まぁ、及川もそれくらいの事は分かってくれてるだろうし……もういいか。どうでも。
……うん。どうでもいいな、もう。

そんな風にどこか投げやりに思いながら午前の仕事を終え、大崎くんと一緒に上がった食堂には花岡さんがいた。

内心うわぁ……と思いながらも笑顔で「お疲れ様です」と告げる。

あんまり離れたところに座っても文句が飛んできそうだからと、適当な椅子を引くと、大崎くんがお茶を入れてテーブルに置いてくれた。

「ありがと」
「いえ」

食堂での新入社員の役割はきちんとこなせるようになっていて、ホッと安心する。

お茶を入れるのは正直私でもいいとは思うんだけど、一応新入社員の役割ってなっている以上はやらせた方がいいんだろうし。
そういう事情を知っていた方が他の支店に移った時、本人も楽だろうから。

お茶なんか飲みたい人が自分で入れればいいし、つまんないルールだなって私も新入社員の時から思ってはいるけど、そういうのが小さな支店では大事になってるんだしそこはもう仕方ない。

花岡さんにもお茶を注ぎ足しているところを見て、よしよしと思いながらお弁当の包みを開けた。



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