強引な彼との社内恋愛事情*2



年が明けた。


初詣には、広重と一緒に近くの神社に行った。


手袋をした手を繋いで、鳥居をくぐる。


屋台が並んでいて、それだけで楽しい気持ちになる。


お賽銭を投げ入れて、手をあわせた。


今年も、広重と一緒にいれますように。


顔をあげると、広重が「なにお願いしたの?」と、訊く。


「異動のこと。ちゃんとやれるようにって」


「それだけ?」


「それだけじゃないよ」


「俺のこと、ちゃんとお願いしてくれました?」


「当たり前でしょ」と、言いながら、恥ずかしくなる。


広重は「よっしゃ」と、嬉しそうだった。


帰りに、大判焼きを半分にして、食べた。


「千花さんが、いなくなるなんて、嫌だな」と、広重は呟いた。


「私も、広重と会社で会えないかと思うと変な感じだよ」


「寂しい?」


「え?」


「寂しい?」


「えっと」


「会社でも会って、家でも会って、ちょっとうざかったからちょうどいいとか思ってません?」


「思ってないよ」


「なら、良かった」


本当に安心したように、残りを一口で食べた。

< 220 / 295 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop