恋した責任、取ってください。
 
でも、それも仕方ないかもしれない。

つい先日、私も恵麻さんが放った雑誌を本屋さんで立ち読みしたばかりだけど、内容が内容だけに、残念ながら買う気は起きなかった。

プレーオフファイナルの特集記事は、それはそれは見事だったものの、真面目な記事だけではないのが雑誌というものらしく、オマケ的な感じで『顔面プレーオフ』なる特集が組まれていて、ブルスタは堂々の1位だったのだ。

恵麻さんのご立腹具合にも、大いに頷ける。

みんなプレーオフ進出を目指して本気で頑張っているっていうのに、失礼しちゃう……。


「しかも大地のヤツ、記事を見て『顔面だけでも王者でいいじゃないか、あははー』って笑ったからね。ハマちゃんと一緒で一番の古株なのに、チームをどうにかしてプレーオフにって気が全く感じられないわ。のほほんと頭に花咲かせてる場合じゃないって分かんないのかしら」


そんなことを思っていると、恵麻さんは、血の繋がった姉弟らしく大地さんを盛大にこき下ろし、ワイルドに焼き鳥を串から引き抜いた。


花の金曜日。

仕事終わりに恵麻さんに誘われ、トコトコと付いていった、彼女のお気に入りだという燻し銀な空気漂う居酒屋『九兵衛』のカウンター席。

頼んだ焼き鳥が運ばれてくるや否や愚痴を零しはじめた恵麻さんに相槌を打ちつつ、私も甘ダレのかかったモモ串を一本もらって食べた。

そうしていると、口いっぱいに頬張っていた焼き鳥を勇ましくビールで流し込んだ恵麻さんが、打って変わって熱っぽい口調で言う。


「前にも言ったけど、ウチのチームから日本代表を出すのが私の夢なのよね。だから、今シーズンこそ、どうしても顔面で選手を選んでるんじゃないって証明したいのよ」

「はい!分かります、そのお気持ち!」


急き込んで言うと、クールビューティーな恵麻さんの目元がふにゃっとなって、大地さんが笑ったときのそれに、とてもそっくりになる。
 
< 63 / 217 >

この作品をシェア

pagetop