理想の恋人って!?
 十センチのヒールなんかで歩ける自信がない。

 不安顔の私に友梨が見せてくれたのは、ストラップにラインストーンがついた、シンプルながら上品な印象のパンプスだ。

「〝でも〟ばっかり言ってないで、おしゃれのためなら、ガマンだってば!」

 そう友梨に言われて、私はそのホワイトパンプスを借りて履き、小ぶりのショルダーバッグを持った。玄関ドアの前でくるりと振り返って妹を見る。

「どう?」
「うん、絶対かわいい! いつものお姉ちゃんじゃない!」

 友梨が満足そうに笑った。

 いつものお姉ちゃんじゃないっていうのは余計だけど、アパレルショップでバイトをしている友梨に言われると自信が持てる。

「絶対みんなびっくりするよぉ」

 妹に太鼓判を押され、私は意気揚々と家を出て、晃一と待ち合わせている最寄り駅前に向かった。

 幼なじみで実家も近いのに、なぜ駅で待ち合わせているかというと、私は自宅から二時間かけて大学に通っているけど、晃一は大学の近くで一人暮らしをしているからだ。昨日の晩、晃一から「車で明梨の家まで迎えに行こうか」とLINEで言われたけれど、家族や近所の人にまで晃一とどうこうなっていると思われるのは面倒なので、駅前で拾ってもらうことにしたのだ。
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