理想の恋人って!?
「就職活動、大変ですか?」
「どうかな。まだ始まったばかりだからね」

 俺を挟んで行われるやりとりに、むかついたのを覚えている。


 だから、気づいてほしくなかったんだ。偶然同じ大学に進学したけれど、このまま明梨には俺の存在に気づくことなく卒業してほしかった。キャンパスで見かけても、見て見ぬフリをしてたんだ。

 誤算だったのは合同授業。スポーツ科学部と食品栄養学部の選択制の合同授業を、明梨も取っていたんなんて……。

「あれぇ、もしかして晃一?」

 通路を挟んだ右側の席に座ろうとして、明梨が俺に気づいた。

「あ、ああ、明梨」

 俺がうろたえていることに気づかず、明梨は俺の好きな表情でにっこり笑う。

「わあ、晃一も同じ大学だったんだね。今まで見かけなかったから、ひょっとしてスポーツ科学部?」
「そう」
「すごいねぇ、なんて偶然! どうして今まで気づかなかったんだろう」

 一人ではしゃいでいる明梨。そりゃ、俺が避けてたからだよ、とは言えるはずもなく、俺はただ曖昧に笑っていた。そうしたら、左側に座っていた友人の陽太が俺に耳打ちしてきたんだ。
< 116 / 119 >

この作品をシェア

pagetop