理想の恋人って!?
「本当にいいのか? これで理想のデートになるの?」

 晃一に訊かれたけど、私は「いい」と彼の手のひらにお札を押しつけた。

 だって、やっぱり友達に奢ってもらうような金額じゃないもの。

 私がシートベルトを締めていると、晃一が言う。

「なあ、これから映画でも観に行こうか」
「え?」

 その提案に私は驚いた。だって、レストランで肩が凝っちゃったし、もう帰る気満々だったから。

「何か予定ある?」

 晃一とどんな映画を見ていいのかわからないけれど、訊かれたのでとりあえず正直に返事をする。

「別に……ないけど」
「なら、映画館まで行くよ」
「運転、大丈夫なの?」

 私の問いかけに、晃一が不機嫌そうに眉を寄せる。

「俺ってそんなに明梨の理想の男から離れてるのか?」
「え?」

 意味がわからなくて晃一の顔を見ると、彼が気まずそうに言う。

「いや、運転、信用されてないのかな、と思ってさ」
「違うよ、疲れたんじゃないかと思ったの」
「ああ」

 晃一が口元を緩めて続ける。「それなら大丈夫。実家の車をときどき運転してるから慣れてる」
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