汝は人狼なりや?(※修正中。順を追って公開していきます)
 馬鹿くんの言う通り、もしも本当に誘拐されたというのなら、なおさら喜んでいる場合じゃない。一体、誰が、なんのために誘拐なんて……?

 しかも、二桁にも及ぶクラスメートの人数を、他の誰にも見つからずに移動させただなんて……。常人のやることじゃないと僕は思った。


「もう、だからこんな非常時に楽しそうにするなって言っているの!」

「なんで?」

「なんで……って、もしも本当に、あんたの言った通りに誘拐されたとしたなら、私たち、死ぬかもしれないんだよっ?」

「そこがまた燃えるじゃん?」

「ぜんっぜん!燃えない!」


 余裕のあらわれなのか口笛を吹く馬鹿くんと、目を釣りあげて怒鳴る如月さんに冷や汗が流れる。

 あわわ、なんだか言い合い喧嘩みたいになってるけれど、わけも分からないこんな状態で、そんな言い合いだなんてしている場合じゃないってば!


「2人とも、落ち着きなって」


 言い合いをする2人の間に割り込んできたのは、こんな状況なのに涼しい顔をしている上杉くんだ。

 クラスの委員長でもあり、バスケ部に所属している彼は、このクラスメートの中では1番の常識人……だと、僕は勝手に思っている。

 上杉くんが2人を上手に落ち着かせているのを眺めていると、隣で膝を立てて座っている黒月くんは言う。


「どうやら僕達、本当に誘拐されたみたいなんだよね」

「……えっ?」

「僕がここで目を覚ました時、他のみんなは床に倒れていて、大和くんと同じように気を失っていた。見知らぬ部屋に、この状況……どう考えても、誘拐されたようにしか思えないだろう?」

「それは……」


 僕達は、本当に……誘拐された?
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