汝は人狼なりや?(※修正中。順を追って公開していきます)

* ▷ 普通を望むが故

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「──いい? よく聞いて。(さとり)


 少女の頭にふと浮かんだのは、過去のこと。……自分自身がまだ、子供の頃のこと。今も子供だと言われたらそれまでだけれど、今よりもうんと子供の頃のことだった。

 毎日毎日、飽きもせずに言い聞かせられた、両親からの言葉の数々。

 それは周りの家族たちと同じ、なんてことない教育の一環。一種の(しつけ)。──はて。教育は一種の洗脳だ、なんて、誰が最初に言い出したことなのだろう。

 少女は当たり前のように両親から躾られていた、教育(洗脳)されていた。そして、少女もまた、当たり前のようにその洗脳(教育)を受け入れた。受け入れて、今の今まで疑うことなく育ってきた。


 〝両親の言うことは、絶対〟だから。


 両親から生える狼の耳。牙。爪。尻尾。

 牙が、爪が、言ってしまえば自分たちのいる辺り一面が……赤く血に染まっている。

 両親たちが喰らった、人間の血で。


 「──いい? 慧」


 繰り返される、教育(洗脳)の言葉。


「──こうやって、人間を喰らうのよ」


 忘れさせぬように、胸に刻み込ませるように、毎日毎日、何度も何度も、私たち(人狼)と血の繋がっている──我が子であるお前も、私たちと同じ〝人狼〟なのだからと、人間の喰らうざまを実践してみせるのだ。
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