生贄投票
翌日の深夜。

こっそりと自宅を抜け出した涼子は、スマートホンに表示された地図の目印を目標に、自転車をこいでいた。


自宅を出てから20分程で、山の方に向かう道を進む。


この辺りは外灯さえなく、家もまばらな為、涼子は懐中電灯を持ってこなかったことを悔いた。


目的地まですぐそこという辺りで、スマートホンの地図が、勝手に拡大される。


「こっちか……」


どうやらここから先は山の方に向かって歩くらしい。


涼子はスマートホンの灯りだけを頼りに、恐る恐る進んで行った。


三分ほど歩いたところで、少し開けた場所に出る。


真っ暗な中に、複数の何かがあった。


近づいた涼子は唖然とした。


スマートホンの僅かな灯りに照らされたそれは、二階堂家の墓と掘り込まれたお墓だったのだ。


最後の懇願とはつまり……。


涼子はそのままその場に土下座すると、二階堂ありさに向かって必死で命乞いを始める。


どれくらいお願いしただろう……。


ザッ、ザッ、パキッ、ザッ、ザッ


誰かがこっちに向かって近づいてくる足音が聞こえた。
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