Focus

「好みを知らない、どこかの誰かのために作るなんて難しすぎるんじゃないの」


身を乗り出して、ミオのまぶたに指で触れる。


「目を閉じてみて」



ミオはためらいながらも、そっと目を伏せる。お菓子のためにお化粧はごく薄くしているだけなのに、肌のきめの細やかさや、長い睫毛がミオの顔の造形の良さを語っていた。

黙っていたら、凄くかわいいのに。負けず嫌いの頑張りやなので勿体ない。



「誰の顔が浮かんだ?」

目を閉じたまま、首を傾げる。


「両親?兄弟?それとも親友?」

< 128 / 229 >

この作品をシェア

pagetop