Focus

コンクールに応募する時から決めていた。もし、入賞したらミオに言うつもりだった。


たったひとりのそばで見つめていたい人。くるくる変わる表情も、意地っ張りなところも全部見ていたい。









一瞬を焼き付けるなら、カメラでなくてもいいのかもしれない。目でも、耳でも心でも。

それでも、だだ一瞬のためだけにカメラを構えるなら、その一瞬がかけがえなく愛おしくて残しておきたい程の価値があるからだ。



切り取ったミオの時間は、巻き戻せはしないし、すぐに過去になっていく。降り積もる程の時間をミオと過ごして思いを重ねていきたい。



カメラが捉えるのは、一瞬の輝きでしかない。それでもその一瞬には、その人の全てが刻まれることがある。


その神が与えてくれる奇跡のような一瞬の輝きをこれからも追い求めていきたい。


その一瞬を与えてくれたのは、ミオだ。



ミオのひたむきさや情熱が奇跡のような一瞬を引き寄せてくれた。





限りのある生の中で、ここまで思いを寄せられる人がいたことに感謝の気持ちが湧いてくる。

愛おしさが募って腕の中のミオを抱きしめると、ぎゅっとシャツの胸にしがみついてきた。意地っ張りで負けず嫌いなミオが、素直になっているのが嬉しい。

泣いているミオをあやすように抱きしめてこれからも知らなかったミオを知ることが出来るのがとてつもない幸せだとわかった。




終わり

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