いい加減な恋のススメ



私はそう得意気に顎を触って話す彼に呆れるとそんな彼の胸に顔を寄せた。


「よかったぁ」


そう自然に漏れた私に彼は「お?」と意外そうに腕を広げる。
あぁ、だから駄目だと言ったのに。いや、言ってないけど。自分の中で言ったの。

安心したからか、じわっと溢れ出す涙を見られたくなくて私は顔を押し付けた。きっとこんなときにしか出来ない。

だけどそれも彼にはお見通しのようで、


「うお、お前泣いてんのか。だせー」

「う、五月蝿い……」

「わー、泉ちゃん泣いてる!幸澤が泣かせやがった!」

「俺じゃねぇよ!」


いや、貴方のせいなんですけどね。
教室から出てきた生徒たちの声にそう思ったけど勿論口には出せなかった。

少しでもいいから彼に伝わっているといいな。私の希望は漸く叶ったから、もうこれ以上は強く望まない。
ただ今まで固く閉ざしてあったものが崩れていく気がする。ずっと心の奥で蓋をしていた気持ちを前にして今まで躊躇ってきた手を伸ばした。

この後これをどうするかはきっと私次第なのだろう。



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