溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】


「よく見ろよ」

「な……っ」


恥ずかしさで目を逸らそうとした私に、新城さんは問う。


「お前は本当に、こんな風になりたいか?」


ハッとして、新城さんを見上げた。

彼の鍛え上げられた体には、ところどころに傷があった。

ナイフで切られたような傷、弾丸がかすめたような痕……。


「高浜さんなんか、俺たちよりSP歴が長いから……これよりもっと、ひどいんだ。SPでいる時間が長いほど、体は傷だらけになる」

「わかって……います」


さっき新城さんと握手をしたとき、私も傷だらけになるのだなあとぼんやり思った。

けれど、それを嫌だとは、思わなかった。

女だからと言われて現場から遠ざけられる方が、よっぽど腹立たしい。

どうせ私なんて、一般的に男性に望まれる女性としての価値なんてないのだから、傷がつこうがどうしようが、かまいはしない。


「結局……私が女だから、追い出したいんですか?」

「違う」

「そうでしょう?私が女だから、仕事がしにくいと……生意気だと、目障りだと、そう思うから。だから私のことを思っているふりをして、辞めさせようとしているんでしょう?」


機動隊のときと同じだ。

ううん、学生時代からそうだった。

男性は、可愛さのかけらもない私を遠ざける。

特に化石のように古いこの警察という組織では、自分より能力が高い女性は目障りでありこそすれ、可愛がられるなんてことはない。

ああ、胸がむかむかする。


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