溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】


「でやあああああっ!」


ガラガラと、残った瓦礫が床に落ちて積もりはじめた灰を巻き上げる。

その上に、私たちがはね飛ばした天井板が、落下した。


──バキイッ!


厚い板は、落下の衝撃で真っ二つに割れた。


「はあ、はあ……げほっ、げほっ」


肺が熱い。喉が痛い。

同じようにせき込みながら、高浜さんが新城さんを抱き起す。

そして、その肩に担ぎあげた。


「煙を吸うなよ、新城」

「高浜さん……」

「行きましょう」


これ以上の長居は無用。

高浜さんと私は、燃える屋敷の中を、姿勢を低くしたまま歩いた。

担がれた新城さんは、いつの間にかまたまぶたを閉じていた。



< 237 / 279 >

この作品をシェア

pagetop