溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】


『ああ、きみの名前を聞いておいてもいいかな』

『こう……新城聖です』

『聖? まさか、男の子か』


おじさんは初めてそのことに気づいたようで、部下らしき青年にタクシーを拾い、途中で着替えさせるように指示した。


『私は中河だよ。このことは、絶対に他人に話してはいけない。お母さんにもだ。途中で車に泥を跳ねられて、お詫びに着替えを与えられたとでも嘘をつくんだ。本当のことをたくさんの人に話すと、きみの命が狙われてしまうかもしれないから』


おじさんは早口で言うと、自分で車を運転して行ってしまった。

車は、まっすぐにひかりの家の方に向かっていった。


< 242 / 279 >

この作品をシェア

pagetop