溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】



半年後……。




「新婦の入場です」

司会のアナウンスで、小さなチャペルにいた全員が立ち上がり、後ろを振り返る。

キイ、と音を立てて開いた木製のドアから、父親にエスコートされる新婦の姿が。

真っ白なウエディングドレスに身を包んだ新婦は小柄で、ヒールの高い靴を履かされているのであろう。

よちよちと歩く姿が、頼りないけれどとても魅力的にも映った。

拍手をして彼女を迎える参列者の向こうで待つ新郎は、新婦とは真逆の、高身長でがっしりとした体つき。



そう、今日は高浜さんと麻耶さんの結婚式。

軽井沢で彼らの新婚旅行もかねて行われるそれの参列者は、多くはない。

本人たちの希望のようで、彼らのご両親と、ごく少数の親族と友人、そして特殊班の私たち、そして麻耶さんの上司である篠田さん。あわせて25名ほどだった。


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