もう君がいない
「蓮の好物フルコースにしたの。」
ふくれっ面はどこにいったのか、
俺の前に座る茉菜は、俺の大好きな笑顔で微笑んでいた。
具材を切るまな板の音とともに、”あ!しまった!”なんて聞こえてくる茉菜の声。
なにかを炒める音とともに、小さく聞こえてくる茉菜の鼻歌。
調味料を合わせているのか、”え、なんで?”って言って、慌てだす茉菜の足音。
煮込みながら、”ぐつぐつ、ぐつぐつ、”って、茉菜が自分でつける効果音。
そんな茉菜を、そっとソファーから覗き見しては、一人でニヤけてしまう俺。
気づいたら、うたた寝していて、、
どこかから茉菜の声がして、
そっと肩を揺すられていて、
目を開けてみると、そこには茉菜がいて、、
食卓につくと、茉菜が作ってくれた温かい料理が並んでいて、
茉菜が、俺のことをわかってくれているんだって伝わってきて、
「おいしいといいんだけど、」
そう言って、少し不安そうにはにかむ茉菜がかわいくて、、
まるで新婚夫婦のような、
新婚ごっこでもしているかのような、
そんな流れに、俺は、終始緩みっぱなしの頬を気にしながらも、
抑えきれない幸せを、これでもかとかみしめていた。