もう君がいない


結局、アメリカに行っても、病気を治すことはできなくて。

こんなことなら、
ずっと、茉菜のそばにいればよかった。

一瞬たりとも、茉菜のそばを離れるんじゃなかった。


そう思うと、すごく悔しいんだ。




残り一年だと、医者に言われたときは、

もういっそのこと、茉菜に会わないまま、

このまま茉菜に忘れられた方が、いいのかとも思った。


でもその頃、アメリカの病院で一番仲良くしてた、同じ心臓病の友達の容体が急変して、

数日後に、亡くなってしまったんだ。


そいつと最後に話したとき、言われたんだ。


”俺は、まだやり残したことがいっぱいある。

でもお前には、まだあと一年残ってる。

俺の分も、お前は絶対後悔しないように生きろ。

残された一年で、一生分生きろ。” って。



その言葉で、俺は日本に帰ることを決めた。


茉菜には迷惑かもしれない。

茉菜を困らせてしまうかもしれない。


でも、それでも、

もう一度茉菜に会いたい。

残りの一年、茉菜のそばで生きていたい。


そう、思ったから。




四年ぶりに会った茉菜は、すごく綺麗になってた。

でも、いくら見た目は変わってても、

中身は俺の好きな茉菜のままだった。


だけど、茉菜の心には、

もう俺はいなかった。


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