もう君がいない


「この辺でやってみよう。」


蓮は、川の流れが穏やかな所で、釣り道具をおろした。

テキパキと竿にルアーを引っ掛けている蓮。


「蓮って、釣りしたことあったの?」

「何回か親父とやったことある。」

「そうなんだ。」

「ん、茉菜はこっち使って。」


そう言って蓮に手渡された釣り竿。

思ったよりも軽かった。



「こうやって、とりあえず投げ込む。」


蓮は、いとも簡単に釣り竿の先を、川の真ん中らへんに投げ込んだ。

私も、見よう見まねでやってみると、、


「えっ!」

「ははっ、何やってんだよ。」


私達の後ろの方の石に引っかかった。


「振りかぶり過ぎ。もうちょっと軽く。」

「う、うん。あっ!」


今度は、近くにあった大きな木に引っかかった。


「はははははっ!へたくそ!」

「もぉ〜笑いすぎ!」


お腹を抱えて笑う蓮。

自分のひどい腕前に、恥ずかしくなる。


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