【詩的小説短編集】=想い=

楽しいはずの時間なのに苛立つ自分がいる。


『チッ、楽しそうにしやがって……』


舌打ちをひとつ。


「あなたは参加しないの?」


そんな俺の耳に不意に声が聞こえた。


ビックっとして振り返ると、シャンパングラスを二つ持って微笑んでいる君がいた。


「あらおじ様、驚かせた?」


「いや、こうゆう場所、苦手なんでね…」


あまりにも美しく微笑むから、テレ隠しに鼻を指で掻く。


うつむく俺に、そう?と君はグラスを静かに手渡した。


『俺は、君を見つめる為にココにいる…』


俺の傍から離れたとたん群がる男たち。


君は天使だから、こんな不精な男なんて似合わないさ……


パーティーはまだ続く。


長い夜はこれからだ。


君から渡されたシャンパングラスを満月の月にかざした。


「お嬢様に乾杯!」


苛立つ気持ちも落ち着き、グラスに口をつける。


そんな姿をきっと君は男どものすき間から、そっと確認して笑うのだろう。


敵わない恋。


縮まらない年の差。


そして埋まることのない地位。


俺はネクタイを外し、外へと歩いた。


風は冷たく、夜空はどこまでも続き、お月様と無数の星達が輝きを競っている。


今日は、彼女の二十歳になった記念日。


そして、もうじき彼女に似合った財界のプリンスとの婚約発表。


庭のベンチに腰掛けながら、君が駆けてくるのを夢に見る。


そうさ、夢なら……


夢なら誰にも負けない……


おめでとう。



可愛い君………



=fin=


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