【詩的小説短編集】=想い=
落ち葉
「ねぇ、知ってる?」
大きな目を、更に大きく見開いて、貴絵(キエ)が私を見た。
「なんだよ」
「だからさぁ〜〜」
興奮で、言葉にならない彼女を、私は呆れ顔で見つめた。
「ほら!あれ!!」
貴絵の指さすところを見ると、落ち葉が舞い散る広場が見える。
「あのね、あの落ち葉で、願いが叶うんだよ!」
『また始まった…』

乙女チックな貴絵は、おまじないや占いなどを信じるタイプ。

私は、どちらかというと現実思考。

「んで?どうすれば、その落ち葉で願いが叶うって?」

ちょっと欝陶しそうに、でも、貴絵を傷付けないように聞く。

「うんとね……」

私の腕を引っ張り、大きな樹木の下に連れて行く。

ヒラヒラと、落ち葉が舞い落ちる。

「これ、秋歌(シュウカ)なら取れるよね」

私は、大きな樹を見上げた。

風に煽られ、色付いた葉っぱが、枝から土へ引っ張られている。

「下に落ちる前に、葉っぱが取れたら、一つお願いごとが叶うんだって」

『あーぁ、そんなにキラキラした目で見るなよ……』

男だったら、悩殺寸前のウルウルな目に、負けそうだ。

「私が取って、貴絵の願いが叶うのか?」

「え〜、叶わないのかなぁ?」

唇を尖らせ、膨れる。

『まったく…こいつの頭はいくつだよ』

「自分で、頑張るから叶うんじゃないのか?」

溜め息混じりで言うと、しばらく、貴絵はう〜んと首を傾げた。

「じゃぁさ、秋歌の恋を叶えようよ!」

『な、なんちゅうことを言うんじゃ!』

私の顔は、みるみる赤くなる。

「だって、秋歌ってば、速水君の事、好きでしょ?」
『……ば、バレてる』

「あ、あんなナルナル(ナルシスト)好きじゃねーよ」

「嘘、顔には、『バレちゃった』って書いてあるよ」
『うわぁ〜、貴絵は乙女チックなくせに、感だけは鋭いんだよなぁ〜』

「わーたよ、取りゃいいんだろ?取りゃぁ〜」

舞い散る落ち葉を、土に着く前に取るのはかなり難しく、私は苦戦した。

もうじき、セーターが必要な位寒いのに、私は汗びっしょりになって、一枚を手に入れた。

「秋歌、可愛い♪」

そんな私を見て、貴絵は満足そうだ。
恋が叶う。
そんな予感がした。

=fin=
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