過去詩たち
2015-02-22 00:46:25

出発





あの景色はまだ忘れさせてやくれない
それは綺麗だったわけではないんだ
むしろ大半の人が気づかず通り過ぎてしまう
そんな景色だから


美女がいたわけでもない
美男がいたわけではない


また、私がいたわけでもなく
君がいたわけでもなく


親がいたわけでも
子どもがいたわけでも
珍しい動物がいるわけでもなく


なぜか平凡なその景色がまだ焼き付いて離れてはくれない


思い出があるわけでもない


特別な事情でも
故郷でもないのに


ついつい寄りたくなって
また帰り道ついでという形でたどり着いた


手を広げる
大きい
手を伸ばす
高く



ああ届きやしない



意地悪な景色


ただでさえ触れられやしないのに
いったいどうすれば良いというのかい


今も一目
たった一目
それでいいから
景色に逢っていたくて


これが恋をしたという状態なら
私はこの景色に恋したことになるだろう


とりあえず
その景色にキスすることから始めようか


それが駄目だというなら伝えることから始めよう






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