*完結* 星野と高瀬のばあい
“あだ名、ちゃんづけで呼び合っている” 中年男と中年女を想像すると、胸がむかついた。
溶かしたバターを一気飲みしても、ここまでむかむかするだろうか。


体育座りをしたひざの上にあごを乗せて、「高瀬」とつぶやく。

「うん?」

「大人になりたい」

それこそ子どもじみた言い草だ。
薄汚いと、大人を罵るのは、たやすい。そんな大人に養われているのが、現実だというのに。


うん、うん、と高瀬が相づちを打つ。

大人は校舎のひさしの上で、体育座りなんかしない。どこにも行けない場所に行きたがるから、自分たちはまだ子どもだ。


高瀬が手が肩にまわされるのが分かった。振り払うことはしなかった。


なんだか今この時だけは、世界に二人取り残されたような、そんな気がしたから。
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