甘いペットは男と化す
 
「あ、村雨さん。気づかれました?」


途端に誰かが部屋に入って来て、驚いて振り向いた。
相変わらず、体に激痛が走ったけど。


「丸二日、眠っていらしたんですよ。頭のほうはハッキリしてますか?」
「二日……?なんで……」
「覚えていませんか?交通事故に遭われたんですよ」
「え……」


初めて知った、俺のこうなった原因。

それを聞いても、まったく身に覚えがなくて、相手の看護師もだんだんと首をかしげていく。

そして医者らしき人に変わって、いくつか質問をされた。


答えられるものと、答えられないものがあり、
答えられるものは、いわゆる知識という物。
言葉や常識、経験などから得たものはちゃんと記憶の中に残っている。

だけど答えられないものは……
いわゆる思い出という物で、自分と関わった人や家族、友人。
自分が好きだったものなどが頭の中からすっぽりと抜け落ちていた。


一通り医者から説明をされたけど
正直パニックになっている俺の頭では、受け入れがたい事実で、
何を話されたのは、今となっては覚えていなかった。


そして次の日、俺の前に現れたのは……




「久しぶりだな。景」




一人の中年男性だった。
 
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