甘いペットは男と化す
8章 拒めない
 
「ケイ?」
「んー?」


日曜日のお昼後、ソファーで横に並びながら、食後の紅茶を楽しむ。

手持無沙汰になったところで、ずっと聞き出したかったことを口にした。


「答えたくなかったら、まだ言わなくていいんだけど……」
「ん?」


「ここに来る前まで、病院にいたって言ってたよね。
 記憶がなくなってたって……自分で気づいて、病院に行ったの?」


ずっと、そこらへんのことが気になってた。


気づけば家に居候し、曖昧なまま、2週間という月日が経っていたけど、そろそろもう少し探りをいれたいところだ。

記憶を取り戻すためには、もう少し情報が必要。


「……運ばれてた…かな」
「え?」


ケイの言葉に、口につけようとしたマグカップを離した。

振り向いて、じっと次の言葉を待つ。


「おそらく俺、車にはねられたみたいで……。
 ひき逃げっていうやつ?

 それで通りがかった人が救急車を呼んで、病院に運ばれたみたいなんだけど……
 頭を強く打ったせいか、記憶が飛んでた」

「……そう、なんだ……」


予想外の言葉。

簡単には聞き流してはいけないと思い、マグカップをテーブルの上に置いた。
 
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