穏やかと癒し・・・ときどき、あい・・・
二人のこれから・・・
――咲希?咲希・・・

孝徳の声・・・

内線で話していた朝の挨拶とはまた違う。

それだけで、それだけで私は涙が零れそうになる。

「・・・孝徳・・・あい、たい・・・」

他に言葉なんかなくて、ただ会いたいってことだけ。

――うん。俺も会いたい。今、どこ?

「さっき、お兄ちゃんに送ってもらったの。自分のマンションに戻ってきた」

――わかった。すぐ、行く。俺のとこに来る?

「うん」

――すぐ、迎えに行く。

「待ってる」

通話を終了した。

私はいつもより大きいボストンに必要なものを用意し、家を出た。

マンションのエントランスに着くと孝徳がちょうど入ってくるとこだった。

「咲希」

ボストンを持ってくれる。

「ありがとう」

孝徳と向かい合うのはあの日以来。

実家に孝徳が来た以来。

信じることが出来なかった私。

孝徳を信じることが出来なかった私。

「行こう」

そう言って歩き始める。

会ったら抱きしめてもらえるって思ってた・・・

ひとことも話さない孝徳と私。

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