まどわせないで
キケンなおもてなし
 ああっ……!
 自分でも信じられない。

 とうとうしてしまった。
 如月さんと……。

「お前が食べたい」

 わたしが話している途中から唇が下りてきて、お腹減ったっていう言葉通りに滑り込んできた舌が、まるで舐めるように……。
 抵抗する暇もなく、如月さんの思うままに唇を、そう。まさしく食べられてしまったのだ。濃厚な口づけに、鳩尾がキュンとして瞼の裏にたくさんの星が飛ぶ。
 なんていうんだろう、あの感覚。
 甘く痺れるような……体の力までも奪われて、しばらくまともに立つことが出来なかった。わたしの顎を下から支える人差し指。唇を閉じないように、下唇を開かせる親指。如月さんのもう片方の腕は、倒れないようにしっかりと腰を支えていた。
 いままでしていたキスはなんだったんだろう、って思うくらい強烈な体験で、他のことなんてひとつも考える余裕さえ浮かばなかった。思考を奪われるくらい気持ちよかったのだ。
 ……皆、ああいうキスを繰り返しているのだろうか?
 とても体が持たない。それに心臓に悪い。ドキドキしすぎて胸から心臓が飛び出すかと思った。
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