わたし、式場予約しました!
 でもそうか。

 だから、和歩はパスポートを取ろうとしていなかったのだ。

 自分は本当は海外には行かないから。

「ごめんなさい、瑠可さん」
と謝る綾子に、

「すみません。
 知ってました」
と言う。

「え」

「この間、和歩に聞いたんです。

 貴女の秘密を話す訳にはいかないからって。

 本当に結婚するわけではないってことだけ話してくれました」

 じゃあ、とほっとした顔をした綾子に言う。

「でも私、他の人と結婚します」

「えっ」

「とりあえず、結婚してみることにしました。

 なにもかも、やってみなくちゃわからないじゃないですか。

 今まで、やけになって、結婚話進めようとしてたけど。

 それに付き合ってくれてた人を、なんだかもう……裏切れなくて」

 あれ以上、強引に押して来なかったときの一真の顔を見て、初めて彼を可愛いと思えた。

「だから、もういいんです」
と言うと、綾子は困ったような顔をする。
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