≪短編≫群青


夜。

大雅はまたいきなり我が家にやってきた。


昼間のこともあったし、本気で家に入れてやらないつもりでいたのだが、大雅があまりにも酒臭かったことに驚いて、心配になり、ドアを開けてやった私は、やっぱりただのオカンだと思う。



「どうしたの? そこまで酔うなんて、最近じゃ珍しいよね」


水を差し出しながら聞く私。

大雅はソファにどかっと座り、グラスを受け取りながら、



「北女のブス、いるだろ?」

「え? あぁ、うん」

「すんげぇしつこく連絡してきてたんだよ。だからずっと無視してたんだけど」

「うん」

「今日、あんまりにもムカついて、文句言うつもりで電話に出たわけだよ、俺は。したら、なんて言われたと思う?」

「何?」

「泣きながら、『今週の日曜、私、誕生日なの』、『その日だけでいいから一緒に過ごしてほしい』、『そしたらもう大雅くんのこと諦めるから』、『お願いだから』って」


そりゃあ、また、ひどく愛されたものだ。

っていうか、知らない子ながらも、相手に対してちょっと不憫にも思ってしまう。



「で、どうすんの?」

「わかんねぇ」


大雅はくいとグラスを傾けて一気に水を含み、



「いくら誕生日だからって、祝ってくれる気もない男と過ごして嬉しいか?」

「うーん」

「行ったら行ったで変に期待させるだけのようにも思えるし」

「んー……」

「つーか、逆に何されるかわかんねぇじゃん。気持ち悪ぃし、怖ぇだろ。ほんとに諦めるつもりがあるのかも疑問だし」

「………」

「だからって、放っといたらまた電話攻撃にメール攻撃がありそうじゃね?」


ぐちぐちと言う大雅の言葉を聞きながら、どうして私が相談されるハメになっているのだろうかと思ってしまう。

こいつは私を何だと思っているのか。


私はため息混じりに肩を落とし、
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