吸血鬼の翼

公園に何かいる―?

公園の外側から適当に見てみると子供の遊んでいる様子もないし、人気も感じさせなかったが、確かに音がしたので美月は気になって公園の中に入った。

イルトの時もこんな感じだったなぁと不思議に思いながら足を前進させた。

怖いもの見たさで、手の平を握り締めグランドを覗てみる。
しかし、そこには誰もいなかった。
美月はフェンスの網目に指をかけて溜め息をついた。
拍子抜けだ…無駄に緊張したみたい。

「確かに音がしたのにな。気のせいだったのかなぁ?」

「…何してんねん。嬢ちゃん?」

「きゃっ!」

不意に背後から声がしたので、美月は驚いて振り向いた。

すると其処にはオレンジ色の頭をした青年で年頃は私より少し上くらいかな…。

服は白いコートを着た風変わりな格好をした人が立っていた。


気配感じなかったんだけど…。

驚いている美月を見て、青年は後頭部を面倒臭そうに掻きながら口を開く。

「…失礼な態度やな。」

普通は背後をとられたら誰でもビックリするわよね…。
文句を言いたげにする美月に構わずに青年は訝しげな顔をして美月をまじまじと見ている。
美月は何事なんだと青年を見返した。
よく見れば、青年は綺麗な橙色の瞳をしていた。

「…なぁ、嬢ちゃん。1つ聞いていいか?」

「…何ですか?」

疑問を投げ掛けられた美月は何が言いたいのか青年に聞き返した。
少しの間を置いて青年は答える。

「イルトって奴、知らん…?」

「……え?」

その言葉を聞いた瞬間、美月の頭の中が真っ白になった。

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