吸血鬼の翼
リフィアの差し示した入り口にはいつの間にか、紫の髪をしている男が立っていた。
耳の先端が尖っている半獣人。真っ黒な服装に襟と腰の部分は髪と同じ色した紫のサッシュを結んでいる。
その腕には気絶しているのか項垂れた少女を軽々と抱えていた。
一斉に視線を浴びるその男の表情は怪しく笑みを浮かべている。
その口の端には紅の色が一筋流れていた。
「やっぱり、お前か…」
ラゼキは苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべ相手を見据えた。
美月は何故だかとても怖くて声を出せずにいたが、男の抱える少女に釘付けになる。
「千秋!!!」
そう今、男が抱えている少女は美月達が探し求めていた千秋その人だった。
その主を美月が呼んだ事によって佐々木は瞠目する。
顔色は悪く、衰弱している。
普段はあんなに明るく元気な少女からは信じられない位、生気が全く感じられない。
遠目からでも、ハッキリ分かる千秋の状態。
直ぐ様、佐々木が千秋の元へ走り出そうとするのをラゼキは腕を掴み行く手を阻む。
「放せッ千秋が…!」
「大丈夫や、必ず取り戻したる…大人しいしとけ、“餌”になりとお、ないやろ?」
「何ッ訳の分かんねー事を!?」
自身を遮るラゼキを強く睨みつける佐々木は手を振り解こうと躍起になる。
男はそんな彼等の様子を見て自身が抱えていた少女に目をやる。
「この子返して欲しいの?いいよ、もうお腹いっぱいだし、ホラ受け取りなよ!」
緊迫した状況に飲み込まれず、楽しげにそう言うと男は千秋を軽々と放り投げる。
それを目の当たりにした佐々木はラゼキの手を乱暴に振り払い、飛んで来る千秋を床に滑り込んで受け取った。
耳の先端が尖っている半獣人。真っ黒な服装に襟と腰の部分は髪と同じ色した紫のサッシュを結んでいる。
その腕には気絶しているのか項垂れた少女を軽々と抱えていた。
一斉に視線を浴びるその男の表情は怪しく笑みを浮かべている。
その口の端には紅の色が一筋流れていた。
「やっぱり、お前か…」
ラゼキは苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべ相手を見据えた。
美月は何故だかとても怖くて声を出せずにいたが、男の抱える少女に釘付けになる。
「千秋!!!」
そう今、男が抱えている少女は美月達が探し求めていた千秋その人だった。
その主を美月が呼んだ事によって佐々木は瞠目する。
顔色は悪く、衰弱している。
普段はあんなに明るく元気な少女からは信じられない位、生気が全く感じられない。
遠目からでも、ハッキリ分かる千秋の状態。
直ぐ様、佐々木が千秋の元へ走り出そうとするのをラゼキは腕を掴み行く手を阻む。
「放せッ千秋が…!」
「大丈夫や、必ず取り戻したる…大人しいしとけ、“餌”になりとお、ないやろ?」
「何ッ訳の分かんねー事を!?」
自身を遮るラゼキを強く睨みつける佐々木は手を振り解こうと躍起になる。
男はそんな彼等の様子を見て自身が抱えていた少女に目をやる。
「この子返して欲しいの?いいよ、もうお腹いっぱいだし、ホラ受け取りなよ!」
緊迫した状況に飲み込まれず、楽しげにそう言うと男は千秋を軽々と放り投げる。
それを目の当たりにした佐々木はラゼキの手を乱暴に振り払い、飛んで来る千秋を床に滑り込んで受け取った。