吸血鬼の翼

静かな雷鳴



「…やっぱ、何もないわ。」

「…??」

「…」

ラゼキは静かにそう言うと話の腰を折った。
美月はラゼキの様子を不思議に感じたが、その時は特に気にならなかった。
“異世界”の話を聞いた後だからだろうか―。
イルトも黙って、再びお菓子を食べ始めた。

窓の外を見るといつの間にか暗闇が広がっていた。
時が経つのは早いものだ。






─────
────
━…


午前2時頃―。

夜空にポツンと浮かんでいる雲から、黒い稲妻みたいなものが走り、真っ直ぐに公園のグランドへと墜落した。

だが、周囲の住民達は稲妻が発生したのにも関わらず、ざわめき等は起こらなかった。
むしろ、静か過ぎるくらいに。
稲妻が止むと砂埃の中からうっすらと人影が見えた。


「…“ここ”に逃げたか、あの吸血鬼。」


漆黒の服を纏った青年が砂埃の中から確かな形として姿を現す。
< 26 / 220 >

この作品をシェア

pagetop