吸血鬼の翼

禁忌の少年【過去編①】





いつだったか──



イルトはまだ10もいかない幼い頃、傷ついて血を流している裸足のままで誰も来ないような山の獣道を歩いていた。

もう何も、思い返したくない……

歩いたあとに点々と赤い血を落としていく…。

それは足から流れた血だけではなく、背中からもおびただしい血の量が流れ、茶褐色のローブを赤く染めた。

どこへ行くのか、辿り着くのか全くわからない──…

彼は意識が飛びそうなのをグッと堪えて我慢した。

そして瞳は前へと向け、ひたすら進む。

身をローブで包み、彼にとって辛い陽射しを浴びずに済んだ。
ふと、イルトは自分の体に流れている血の音を聞く。


なんで生きてるんだろう…


漠然とした疑問は頭の中で波紋が広がりそして消えていく。

ただ足を進める。

ボォ~としてると木の根っこに足をとられて転んでしまった。

土で泥まみれになった彼は自分の手のひらを見た。
擦った手は赤くなっている。

そこから……何もする気が失せてしまった。
起きる気力すらもう…ない。

このまま死ぬのかな…

少年はゆっくりと目を閉じた。


「子供が倒れてる!!」


誰だろう────?


微かに聞こえる柔らかな声。聞くと警戒する気もなく、そのまま意識が薄れていった。


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